さてビザンツ帝国というとみなさんは何を思い出すでしょうか？ きっとほとんどの方が「何それ？」というような思いを持たれるのではないでしょうか？ ですが、ローマ帝国を知らない方はほとんどいないと思います。ビザンツ帝国とは、ローマ帝国の継承者ともいえますし、ローマ帝国そのものであるともいえます。普通は西暦395年に東西に分裂したローマ帝国の東半分、「東ローマ帝国」と呼ばれることが多いですが、正直な話、私はあまりこの言い方を好きではありません。
なぜかというと、ローマ帝国は東西に分裂したわけではありませんし、ビザンツ帝国もローマ帝国の東半分だけの継承者というわけではないからです。通常、ローマ帝国の東西分裂といわれる「事件」は、帝国が東西に分裂したわけではなく、それ以前にもみられた複数皇帝による分割統治以外の何物でもありません。その東西に別れた状態がその後固定化してしまったから、そういわれただけのことです。その後も、ローマ帝国は一つだったのです。そのことは西ローマ最後の皇帝ロムルス・アウグルトゥルスを廃して、いわゆる「西ローマ帝国の滅亡」を実現させたオドアケルが自分の地位の保証を東ローマ皇帝のゼノンに求めていることからもわかります。だからこそ、ユスティニアヌス１世の旧西ローマ領の「再征服」が可能だったのです。
話がそれてしまいましたが、ビザンツ帝国はローマ帝国の正当な後継者であり、最後までみずからを「ローマ帝国」と称し、そこに住む人びとを「ローマ人」と称し続けました。(ですから、ビザンツ帝国を「中世ローマ帝国」と呼ぶ方もいらっしゃるようです。)このコーナーでは、そんなビザンツ帝国の歴史、そしてその歴史の中に登場した皇帝たちを紹介したいと思います。
【参考文献】
『紀行ビザンチン史』那谷敏郎 新潮社
『ビザンツ帝国』井上浩一 岩波書店
『ビザンツ皇妃列伝』井上浩一 筑摩書房
『ビザンツ帝国史』尚樹啓太郎 東海大学出版会
『世界帝王系図集』下津清太郎 近藤出版社
『コンスタンティノープル陥落す』ランシマン みすず書房
『BYZANTIUM THE APOGEE』JOHN JULIUS NORWICH
『BYZANTIUM THE DECLINE AND FALL』JOHN JULIUS NORWICH※系図情報提供：
「パレオロゴス朝の末裔」の系図に関しては松本好晴さんから多くの情報をいただいております。感謝いたします。
